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まだよく分かってない人のためのSMARTゴールを使った目標設定方法 Part.1

 

この記事ではSMARTゴールの必要性やコンセプトをしっかり理解した上で、実践に取り入れていきたい人向けにSMARTゴールを使った目標設定のやり方を説明していきます。しっかりと理解できるよう各ポイントをまとめながら書いているため、その他のSMARTゴールに関する記事と比べると文章が長めになっていますが、その分だけ理解しやすい内容となっていますので、ぜひ最後まで読んで頂ければと思います。

また、本記事の中で頻繁に「目的」と「目標」という言葉が出てきますが、もし両者の言葉の意味をしっかりと理解してから読み進めたいという方がいましたら、ぜひこちらの目的と目標の再考に関する記事を読んで頂ければと思います。

 





 

ー 初めに:SMARTゴールとは何か

SMARTゴール(SMART Criteria)とは1981年に有名学術誌の一つである「Management Review」の中で、George T. Doranによって提唱された目標設定をする際に考慮しなければならない項目と基準をまとめたビジネス用語になります。

発表された当初は1. Specific 2. Measurable 3. Assignable 4. Realistic 5. Time-related の5つを意味する略語でしたが、1981年に発表され大きな反響を呼んだ後、より現代的なビジネスモデルに合うよう別の単語を充てがうようになったり、SMARTERのように新しい単語を付け足した上でビジネス現場で使われるようになっていきました。SMARTゴールが意味する単語が参考にするビジネス書や記事によって異なっているのは、上記の理由により、SMARTゴールそのものに多くのモデルが存在することに起因しています。

この記事では、最も一般的なモデルである1. Specific 2. Measurable 3. Attainable 4. Relevant 5. Time-Bound の5つを略したSMARTゴールのモデルを使って説明していきたいと思います。

 

ー なぜSMARTゴールが必要なのか

SMARTゴールの内容について話す前に、まずは、そもそもなぜSMARTゴールを考慮して目標設定をするべきなのかについて書きたいと思います。さっさと内容について話せよと思う人もいるかもしれませんが、知識は必要性を理解した上で学ぶと最も効率的に身につくと個人的には考えているので、もう少しお付き合い頂ければと思います。

皆さんは団体もしくはチームでプロジェクトを行うことになった際に、皆で話し合って何をするべきか分かった気はしたんだけども、いざ行動に移す局面になったら具体的に何をしたら良いのか分からない、といった状況に陥ったことはありませんか?自主性を発揮して自ら考えて動いていきたいにも関わらず、何から考えていけば良いのか分からないといった経験は、誰しも一度は経験しているのではないかと思います。

実はこういった問題が起きるのは、目標設定が適切に為されていないことが原因であることが殆どです。上記の状況における問題点は、1. チームメンバーの足並みが揃わない 2. 次に何をするべきかのアクションプランを考えることができない の二点になるかと思われますが、なぜ目標設定が適切でないとこのような問題が起こるのでしょうか。

 

 

ではここで逆に考えてみましょう。まず初めに、チームメンバーの足並みが揃わない時というのはどのような時でしょうか?おそらくそれはメンバーの一人一人の向いている方向性が違う時ですよね。例えば、売上を伸ばすという目標一つにしても、既存の顧客を中心に売上増を狙っていくのか、新規の顧客を開拓しつつ売上増を狙っていくのかでも方向性は変わってくると思います。

では次に、アクションプランを考えられない時というのはどういった状況の時でしょうか。それもおそらく、自身の方向性が定まっていない、もしくは周囲と比較して方向性に確信が持てない時であると思います。例えば、ある人は既存の顧客向けに戦略を練っており、またある人は新規の顧客を開拓するための戦略を練っているとしましょう。もちろん、両者に同時にアプローチをしても良いのですが、仮に各メンバーが注力すべきだと考えているターゲット異なっている場合、具体的にどのようなアクションプランを立てていけば良いのかを考えることは非常に難しくなります。

 

ここまで書いたらもうお分かりだとは思いますが、目標設定というものはプロジェクトの方向性を定める指針として具体的に設定されるべきものであり、以下の

  1. 目標を立てたにも関わらず、チームメンバーの足並みが揃わない
  2. 目標を達成するための具体的なアクションプランを立てられない

といった問題を回避するために必要な設定の基準として、SMARTゴールは使われているのです。

 

私がこの記事を書いた理由は、他のSMARTゴールに関する記事を読んでもSMARTゴールを使う必要性を明確に理解させてくれる記事がなかったこと、また、SMARTゴールを基準とした目標設定はビジネスの場だけではなく、個人的活動や非営利団体などを含めた全ての活動に共通して必要なプロセスにも関わらず、その重要性を伝えきれていない記事が非常に多いと感じた為です。

そのため、この記事では読んでもらった人にビジネスだけではなく様々な活動にもこのSMARTゴールを適応していってもらえるよう、ビジネス以外の例も出しながらその重要性を理解してもらえるような形で記事を書いていきたいと考えています。それでは早速、各言葉の意味とポイントを確認していきましょう。

 

 

ー Specific(具体性)

Specificとはプロジェクトのゴール(目標)を明確にし、かつゴールの目的もしくは手段を具体的に記すことです。よくSpecificの段階では単にプロジェクトの目標を明確にするだけで良いとの記事を見かけますが、それだけでは先に述べた問題を回避するには不十分です。

例えば、「○○○万円を売り上げる」という目標の裏には「売上を伸ばす」という目的が存在することが考えられますが、この目的一つを取っても、顧客ロイヤルティを向上させる目的を持って既存の顧客からの売上の増加を狙っていくのか、はたまたロイヤル・カスタマーの数を増やすという目的を持って新規顧客からの売上の増加を狙っていくのかでもチームメンバーが向くべき方向性は変わってきます。

目的を設定する必要性があまりなく、ただ単にXX分の売り上げを達成するという目標を設定する場合であってもプロジェクトの方向性を定めるためには手段を明記するべきです。この辺りは”Attainable”のところでもまた触れますが、「YYの需要を見越し、既存の顧客にアプローチをしていくことで売上増を狙っていく」のように記すだけでもメンバー間の足並みを揃えるための非常に有効な目標設定となります。

当然のことながら、目的や手段を設定する際に一つのターゲットや方法に拘る必要はありません。先の例でいうと、両者をターゲットとしたい場合には既存の顧客から従来通りXX分の売上を上げつつ、新規の顧客への販売も増やし、新規顧客からはXX分の売上を増やすといった形でも記すことは可能です。

 

 

さて、ここまでの例であれば単純に「XX分の売上を計上する」といった形で簡単にゴールを明確化することができましたが、その他のケースではどうでしょうか。例えば、ゴールがCSR(企業の社会的責任)への取り組みによる企業価値の向上となる場合はどうでしょう。途端に難しくなりますよね。しかしながら現実問題として、プロジェクト・ゴールが単純な数字で計ることのできない目標であるケースは非常に多いです。

それでは数字などでは表せないゴールはどのように設定したら良いのでしょうか。初めの方で述べたように、SMARTゴールを使う理由は方向性が定まらないことによる弊害を避けることにあります。これは言い換えれば、ある特定の方向に向かって最終的に成果を感じることのできる目標設定さえ出来れば問題ないということです。と言われてもピンと来ませんよね。では、ここで例を出して考えてみましょう。

ある民間団体が「平和を達成する」という目標のもと活動をしているとしましょう。皆さんが仮にこの団体に入り活動に参加することになったとして、どのような活動を始めていきますか?おそらく多くの人が回答に困るのではないでしょうか。これはそもそもの「平和を達成する」という目標自体が方向性の定まっていない設定、すなわち目的の曖昧な目標設定だからこそ発生する問題なのです。

 

ではこの「平和を達成する」という数値化できない目標に方向性(目的)を持たせるためにはどうしたら良いのでしょうか。実はこの場合に必要となってくることは、「どのような形を持って平和が達成されたとするのか」を考え、平和というコンセプトに対して定義付けを行うことになります。この定義付けこそが具体性を持たせるため、延いては目的を明確にするために必要な初めのステップとなります。

それでは平和の定義を「相互理解の進んだ世界」とし、「異なる価値観を持つ人を受け入れて、相互理解を推し進めることによって訪れる平和を実現する」という方向性を持った目標を掲げたとしましょう。どうでしょうか。途端にどのような活動をしていけば良いのかイメージが湧きやすくなったのではないでしょうか?

このように数字では表せない目標設定を行う場合には、まずはゴールの定義を明確にすることで目指すべき方向性(目的)を定めなければなりません。一口に平和と言っても人それぞれ異なるイメージを持っていることは当たり前であり、極端な話ではありますが、何をもって平和とするかが明確でなければ、自身と敵対する人を全員抹殺して平和を達成するなんて方法もあり得てしまう訳です。

このように皆がそれぞれ別々の平和を思い描いていた場合、チーム内での足並みなど揃うはずがありません。したがって例えゴールが数値化できないものであったとしても目標設定はSpecific(具体的)に考える必要性があり、SMARTゴールはこうした目標設定の際に有効な手段(基準)となるわけです。

 

 

それでは最後に「Five W Questions」と呼ばれるものを軽く説明して、このSpecificの項目を終わりにしたいと思います。この「Five W Questions」とは「What, Why, Who, Where, Which」の質問のことであり、往々にして「How」も加えてアイデアや計画を練る際にアメリカで広く使用されています。

  • What: 何を達成したいのか
  • Why: なぜそれが重要なのか。もしくはやる必要性があるのか。
  • Who: 誰が関わってくるのか。(ターゲット、パートナー、etc.)
  • Where: どこでやるのか
  • Which: どのリソースを使っていくのか。
  • How: どのように進めるのか

しかしながら私はこの「Five W Questions」自体はSMARTゴールにおいて大して重要視をしていません。それは初めの方で述べたようにプロジェクトの方向性を明確にすることの方が意味合いとしては重要であり、また、プロジェクトの内容がこの「Five W Questions」に当てはまらないことも多々あるためです。しかし物事をSpecificに考える際に有効な手段であることは間違いないため、一応ここで説明させて頂きました。

それでは次回(Measurable & Attainable)に続きます。

 

Reference
Doran, G. T. (1981). “There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives”. Management Review. AMA FORUM. 70 (11): 35–36.

 

 

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